Share

第11話 隊長室のオアシスと少女たちの秘密

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-11-30 14:41:01

 ユウは細やかな配慮を見せる。すべての人間が同じものに価値を見出すわけではない。彼の統治は、個々の欲求を見極め、それを統治の「道具」として活用することにあった。

 ユウは少し考え、ゆっくりと言葉を継ぐ。

「酒が飲めない者は、領主城で働く女の子の紹介とか……どうだろ?」

 その言葉が落ちた瞬間、警備兵たちの間に一気にざわめきが広がる。

「ま、相手が嫌がれば終わりだがな。苦情が来たらアウトだ。」

 ユウが言い終わる前に、警備兵たちはすでに騒ぎ始めていた。

「領主城の使用人の女の子は……格別にきれいだよな!」「しかも、家事はプロだぞ! あんな嫁が欲しいぞ……毎日すぐに帰るようになるだろうな!」

 どうやら、酒よりも効果が高かったらしい。可愛いは──正義。最強ってわけか。

 場の空気はすっかり変わり、警備兵たちのやる気は最高潮に達していた。それぞれが楽しそうに話しながら、早速指示書を手に取り任務へ向かう様子は、まるで先ほどまでの緊張が嘘のようだった。

(よし、これで路地裏の治安も改善されるだろう。後は、彼らがどこまで自律的に動くか……)

 ユウは満足げに頷いた。彼が目指すのは、恐怖による支配ではなく、自らが望んで行動するような統治だ。

 警備隊長が近寄ってきた。

「辺境伯閣下、さすがですね。兵士の扱いに慣れていらっしゃいますね。」

 ユウは肩をすくめる。

「あぁ……まぁ、こういう世界は酒か女を餌にすれば釣れるもんだろ。」

 だが──。

 ……ちょっと待て。これ、釣れ過ぎじゃないのか!?

 隊長の言葉を聞き流しながら、ユウは周囲の警備兵たちを観察する。そこには、報酬の話を聞いた瞬間、目を輝かせた男たちがズラリと並んでいる。やる気に満ちているのは結構だが……いや、これはちょっと怖くなってきたな。

(彼らの欲望が、制御不能な方向へ暴走しないか……? 統治とは、常に均衡を保つことだ。恐怖と利、そして、その両方を越えるモラルがなければ、いずれ破綻する。)

 ユウは念を押すように、隊長へと鋭く言い渡す。

「もう一回、言っておくからな。」

 場が静まる。

「領主城の女の子から苦情が来たら、お終いだからな?」

 隊長の表情が引き締まる。

「隊長からも再度、注意をしておいてくれよ。それこそ──処分対象だからな!」

「……は、はい。かしこまりました!!」

 隊長は背筋を正し、深く頷いた。

 ──頼むぞ。

 ユウは軽く息をつきながら、やる気に満ちた警備兵たちを再び見渡す。どうやら、この場を完全に掌握することには成功したようだ。

(だが、これは始まりに過ぎない。この領地を真に治めるためには、もっと深く、もっと繊細な手腕が必要になるだろう。辺境伯としての道は、まだ始まったばかりだ……)

 問題は──この勢いを、どこまで制御できるか、だな。

 さて、治安の対策がひとつ――いや、ふたつだな。 路地裏の見回りも命じたし、これで治安維持の一歩は踏み出したな。

隊長室へ戻ると、目に入ったのは仲良くなったらしいミレディとシャルの二人の姿だった。この空間のむさ苦しさを忘れさせるような、まさにオアシス。美少女のキラキラ感、こういうのは本当に癒されるものだ。

ユウは軽く微笑みながら尋ねる。

「二人とも仲良くなったんだな?」

「「うん♪ なったぁぁ♪」」

(……声をそろえるなよ。息までぴったりか。しかも、セリフまで同じ。仲良すぎだろ!?)

ユウは内心でツッコミを入れつつ、少し気を引き締めて続けた。

「それで、何を話してたんだ?」

「え? あ、えっと……その……」

ミレディはどこか気まずそうに、少し視線を泳がせながら答える。

「シャルちゃんは、武器なら何を使いたい? って……聞いたりぃ……」

(……武器の話でキラキラしてたんだ?)

ユウは思わず、目を細める。

(いや、どうしてそんなに嬉しそうなんだ。このキラキラした雰囲気、まるで楽しい趣味の話をしていたみたいな顔じゃないか。……だまされた感じがするのは気のせいか?)

ユウは軽くため息をつきながら、二人の様子をもう一度眺める。

(まあ──元気そうなら、良しとするか。)

ミレディさん、武器が似合わないシャルに、何を教えようとしてるのさ? いや、ミレディも武器が似合わないよな。……というか、そもそも武器に詳しくないよね?

ユウはふと疑問に思い、尋ねてみる。

「そういえば、ミレディって武器好きなの? 興味あったんだ?」

「ん? ないよぉ? 知ってるのはぁ、ナイフと剣はぁ……しってるぅ。」

「あ、そうなんだ。」

するとシャルが、嬉しそうに言葉を重ねる。

「あ、わたしもです。剣とナイフは知っていますよ!」

(……それで盛り上がってたんだ?)

ユウは思わず眉をひそめる。

「よく盛り上がれたね?」

「えっとぉ、このあとユウくんにつれて行ってもらおうねって、話してたのぉ♪」

「はい。だめでしょうか?」

シャルが少し控えめに尋ねてくる。

(いや、どうしてこんなにキラキラしてるんだ……武器の話だぞ? 俺はなんとなく騙されたような気がするんだが──気のせいか?)

ユウは軽く息をつきながら、二人の楽しそうな顔を見つめる。

(まあ──本人たちが楽しんでいるなら、それはそれでいいか。)

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3   第36話 辺境伯の紋章とミレディの使命

    秘密影猫(かげねこ)組織の誕生——情報収集の始まり ——ミレディの成長と誇りの紋章 ミレディは今では、一人で平気で町へ出かけられるほどにまで成長している。かつて彼女は孤児として男に襲われた過去があり、その恐怖からユウに助けられ、保護された。あの出来事をきっかけに、彼に深い信頼と想いを寄せるようになった。 当時のミレディはユウと片時も離れようとせず、トイレに行くときでさえ付き添いを求めたほどだったが、ユウはいつも笑顔で応じていた。 そんな彼女に自信が芽生えたのは、武器を買い、戦闘訓練を積み、仲間と共に川へ向かう途中で獣を討伐し、ユウに褒められたことがきっかけだった。さらに、ユウから贈られた辺境伯の紋章入りペンダントと、同じ紋章が金糸で刺繍されたショートマントも、彼女の背中を力強く押したのだった。 この紋章は国王から正式に授けられたもので、王国の象徴たる黄金の王冠が頂点に輝き、その下には騎士剣と両手剣が交差する。「王国の守護者」としての武勇と戦略の均衡を示し、交差点には魔物討伐の象徴たる燃え上がる炎が刻まれる。背後には領地を囲む森の影が深緑で描かれ、王国の境界を守り、魔物の脅威と対峙する宿命を象徴する。剣の下部には鋼鉄の盾が据えられ、王国の紋章が刻まれる。これは「王国の最後の砦」としての役割、辺境伯の忠誠と防衛の責務を誇示するものだ。盾の周囲に彫り込まれた城壁の意匠は、王都へと続く唯一の安全な道を守る者であることを示す。 紋章全体は鋭角的な構成で、整然とした威厳あるデザインだ。王家より授けられたこの紋章は、単なる貴族の印ではなく、「魔物討伐と王国防衛を担う者」という誇り高き使命を刻み込んだ象徴なのである。 この紋章のおかげで、ミレディが町で絡まれたり、意地悪されることはなくなった。声を掛けてくるのは警備兵や衛兵くらいだ。さらに、ユウに連れられ買い物をしていたことで、町の人に顔を覚えられている。誘拐や襲撃の恐れがあるため護衛はつくものの、ミレディは自由に街を行動できる。彼女自身も、町で襲われそうになった際にナイフを使い瞬時に撃退し、その強さを知らしめていた。 —&mda

  • 転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3   第35話 蕩けるほどの愛おしさ

     シャルの小さな胸を触りながら、抱きしめて上半身を起こした。片手は乳首を弄り、もう片手で柔らかな腹を撫でる。腰を小刻みに動かし、中をかき混ぜるような動きをした。その刺激に、シャルの喘ぎ声はさらに甘く、乱れていく。「んぅぅん……♡ あぁ……ん♡ あ、あ、あぁ……ん♡ や、だ、だめぇ……あぁ……ん♡」 シャルの瞳は完全にトロけて焦点が定まらず、口元は僅かに開き、甘い吐息が漏れる。身体は快感に打ち震え、膝をガクガクと震わせ、今にも崩れ落ちそうだ。その腟内が、きゅぅぅと俺を締め付けてくるとぷしゃ……ぷしゃぁぁ♡と腰をビックンっ♡ ビックンっ♡と動かし、快感に身を震わせながら潮を吹き出した。「あぅ……♡ ユウ様ぁ……で、出ちゃいましたぁ……ううぅ」 絶頂の余韻に、小さな体をひくっひくっと震わせるシャル。その顔は恍惚としながらも、どこか呆然としていた。 俺も射精をして、振り向くシャルの唇に夢中でキスを始めた。「んぅ……はぁ、はぁ♡ んぅ……♡」 シャルも夢中でキスを返してきた。互いの唇が熱く、喘ぎと混じり合ったキスは、二人の絆をさらに深く結びつけるようだった。 夢中でキスをしてくるシャルを抱きかかえ、俺はソファーへと向かった。「はわっ、どちらへ?」 急に抱きかかえられたシャルが、目を丸くして驚いた顔で聞いてきた。その小さな手が、思わず俺のシャツをぎゅっと掴む。「ソファーで、ゆっくりと続けようかと……」「そうですか……もう、終わりだと……思いました」 顔を真っ赤にしたシャルが、恥ずかしそうに、しかしどこか名残惜しそうに言った。そんな可愛らしい姿を見て、シャルの頬に頬ずりをした。

  • 転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3   第34話 愛しきシャルの甘い吐息

     俯き、顔を真っ赤にして必死に甘えているのが伝わってくる。普段は、絶対にこんなことを言わないシャルだからこそ、その姿に胸が締め付けられる。向かい合わせで抱っこして、シャルの唇に吸い付いた。「んぅ……ん、ん、んんぅ……♡  はぁ♡  はぁ……はむっ♡」 お互いの口の周りが、お互いの唾液で濡れる。その生々しい感覚が、さらに俺の理性を揺さぶった。「ユウ様、涎が……ぺろっ♡ ぺろっ♡ ひゃ……あ、くすぐったい……」 シャルが俺の口元を舐めとると、その舌の感触に思わず身体が震えた。「シャルも口の周り、涎が……ぺろっ、ぺろっ♡」 俺もシャルの口元を舐めると、彼女はえへへと愛らしい笑顔を見せた。「えへへ♪ ありがとうございます……きれいになりました?」 こんな笑い方も普段しないよな……「ふふ……」「うふふ……」とかだよな。その無邪気な笑い方に、俺の心は温かくなった。「どうしたんだ? 今日は、可愛すぎだな……そういう表情とか口調、可愛いな」「……ですね、普段は……しませんよ。恥ずかしいですし……ユウ様の前だけですよ。……特別なのです」 シャルは少し照れながらも、真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。その言葉と表情が、俺にとってどれほど嬉しいか。「そっか。それは、嬉しいな。他のやつには見せるなよな。もっと特別扱いしてくれていいぞ」「してる……わたしの肌を触っていますし……エッチなことしてる……キスも……特別ですよ? 夫婦ですし。他

  • 転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3   第33話 キッチンでの甘い誘惑

    「シャル、今日は、なにするんだ?」 俺は自らキッチンに立ち料理を始めていた。「はい? えっとですね……今日は……お肉を炒めようかと。お好きですよね?」 シャルの声は、いつものように穏やかで、俺の好みについて純粋な問いかけを返してきた。しかし、そのわずかな間、彼女の大きな瞳は俺の表情をじっと見つめ、何かを探るように揺れている。まるで、俺の言葉の裏にある本当の意図を測ろうとしているかのようだ。 そういう事を聞いているんじゃないんだけどな、と内心で苦笑する。俺が聞きたいのは、今日のシャルの予定や、この小屋での過ごし方だったのに。 今日のシャルは、膝上丈の軽いスカートが付いたショートパンツに、シンプルなエプロン姿だ。その丈が短いから、すらりと伸びた可愛らしい太ももが露わになっている。エプロンの紐は背中でキュッと結ばれていて、華奢なウエストが強調されていた。 フライパンを手に持ち、くるりとこちらを振り返る。その仕草一つでエプロンの裾がひらりと舞い、柔らかな金色の髪がふわりと揺れる。その全てが、まるで朝の光の中で舞い踊る蝶のように、お淑やかで、それでいて愛らしい。時折、フライパンの向こうからちらりと見える上目遣いや、小さく首を傾げる仕草は、俺の視線を釘付けにした。その純粋な可愛らしさに、俺の心臓はトクンと穏やかなリズムを刻む。このまま時間が止まればいいと、そんな甘い錯覚に囚われるほどだった。その全てが、ただただ可愛すぎる。それも、踏み台って…… シャルがフライパンを揺らし、トントンと小気味よい音を立てて料理に集中している隙に、俺はいたずら心でそっと忍び寄った。そのまま床に寝転がり、彼女のショートパンツの中を覗き込む。 ショートパンツの裾から見えたのは、純白の柔らかなレース。それが肌にぴったりと吸い付くように沿い、雪のように白い太ももの付け根を愛らしく縁取っている。さらに奥を覗き込めば、レースの向こうに透けて見えるのは、薄い桃色に染まった、愛液でしっとりと光る秘裂。その中心には、小さな陰核がぷっくりと膨らみ、微かにピクピクと脈打っているのが見て取れた。シャルが動くた

  • 転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3   第32話 ユウの決断、シャルの道

     王は微かに笑みを浮かべ、満足げに頷いた。「そうか。ならば、ユウ殿に任せておけば問題あるまい。伯爵領もユウ殿に統治を一任する。問題あるまい。」 その瞬間、決断は現実となる。 シャルは伯爵としての立場を維持しながらも、領地の統治、運営をユウへ託すことで、自らの望む道を歩むことを選んだのだ。 ユウと共に過ごす生活は変わらない。 しかし、これまでとは違い、彼女の名前は領地の主として刻まれることになる。 彼女の人生が大きく動いた瞬間だった。 広間に響く王の声は、揺るぎない威厳を帯びていた。「ユウが領地経営を担う。」 その言葉が放たれた瞬間、貴族たちの間にざわめきが広がる。 誰もが王の決断に驚きながらも、異を唱えることはできない。 王は続ける。「この領地の統治は、ユウ殿に一任される。これ以上の議論は不要——正式な布告とする。」 重い宣言が広間に響く。 これで決定だ。ユウの立場は確固たるものとなり、誰もがその権威を認めざるを得なくなった。 ユウのそばにいたシャルは、申し訳なさそうに視線を落とす。 そして、ほんの少し頬を赤らめながら、静かに呟いた。「……ご迷惑をおかけします。ユウ様。」 その言葉とともに、彼女はほんの少し甘えるようにユウを見上げる。 ユウは肩をすくめる。「別に気にしてないさ。」 王はその様子を微笑ましそうに見ていた。 シャルが、ただの伯爵ではなく「ひとりの少女」としてユウを慕っていることを、王は理解している。 その場の空気が穏やかになりかけた——その瞬間。「国王陛下の前で……やはり奴隷は常識がないですな……。」 低く響いた呟き。 瞬間、広間の空気が凍りついた。 ユウの表情が僅かに歪む。 視線を向ける。ただそれだけで、侮辱を口にした貴族は息を詰まらせる。 し

  • 転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3   第31話 国王の貴族への裁き

     その瞬間、貴族たちの間に動揺が走った。「……いえ、陛下ですぞ!? なにを言っていらっしゃるのですか!?」 一人の家臣が慌てた声をあげる。しかし、その言葉を遮るように——「任せるということは、そういうことだ!」 王が家臣へと鋭い視線を向けた。「貴様に任せると言って、わしが横から指示をする。それが領主にとってどれほど不快か、分からぬか? それを任せるとは言わん!」 王の言葉は広間全体に響き渡った。誰も口を開けない。 そして、王の目が細まり、次の言葉が落ちる。「……元貴族の娘……そうか。戦でのぅ……そして奴隷か……。」 語調が変わる。どこか冷たさを帯びた声だった。「不正に財産を奪い、娘の保護すらせず、奴隷商に売り払う——それが貴族のすることか?」 ざわめきが消えた。広間は沈黙に包まれ、誰もが王の表情をじっと見つめていた。「直ちに調査し、その者たちを捕らえよ! わしが、直接裁きを下す。」 鋭い命令が発せられ、部屋の空気が一変する。 衛兵たちの動きが固まり、場の緊張が高まる。「人の心があるとは思えん……もはや、その貴族は人ではない……。」 冷たい言葉が容赦なく告げられる。「ならば、ワシも人とは扱わぬ。」 言葉の重みが空間に染み渡る。「全財産の没収、貴族位の剥奪――……奴隷とする! 異議は認めん。」 この場で、それは決定された。 その貴族だった者は、もはや貴族ではない。もはや人としての地位も剥奪され、人とは扱われぬただの存在へと落とされた。 裁きの場は静まり返り、重い決断の余韻が漂う。 この宣告は、王国内に大きな影響を及ぼすことになる――。 

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status